胸の小鳥

鳩はきのうもそこにいた
丸い目玉が怖かった
きょうもきみは足を速めた

胸の小鳥が脅えだす
震えが膝まで降りてくる
ふときみは足を止める

それは張られた罠なんだ
脅えなくてもいいんだよ

はじまりの日は来るのかな
きみの小鳥はさえずるの
はじまりの日は来るのかな
きみの小鳥はさえずるの

ためらうときではないけれど
勇気がほしいのいまなのに
いよいよ迫ると怖くなる
なんだかいまもまだ胸が騒いでる

どうせ何もできないさ
冷めた侮蔑が見下ろした
きょうもきみは笑みを浮かべた

胸の小鳥が脅えだす
震えが膝まで降りてくる
いまきみは唇を結ぶ

それは張られた罠なんだ
脅えなくてもいいんだよ

はじまりの日は来るのかな
きみの小鳥はさえずるの
はじまりの日は来るのかな
きみの小鳥はさえずるの

ためらうときではないけれど
勇気がほしいのいまなのに
いよいよ迫ると怖くなる
なんだかいまもまだ胸が騒ぐ

きみの小鳥はさえずるの

いまもまだ胸が騒いでる

Sketches


骸骨男

鳩はきのうもそこにいた
丸い目玉は笑わない
見るのが怖くて道の端めざした

胸を横切る怯えにも
たちまち気づいていたんだね
逃げたほうまでわらわら追ってきた

ひとりでできないだめな子は
骸骨男にあげちゃうぞ

骸骨男のジャンパーも
靴下もズボンも同じ色
くぼんだ眼窩は暈けていて
瞳の色はわからない

助けがいるのはいまなのに
躊躇する場合じゃないけれど
差し延べられると怖くなる
なんだかきょうもまた胸がさわぎだす

一人二人と帰宅した
いつか夕闇降りていた
遅くはならない そういっていたのに

揺れる植木に驚いた
呼吸を忘れたそのときに
闇の向こうに家族の声がした

骸骨男はどこにいる
夢でも見たのじゃないのかい

眼窩のくぼんだおじさんが
笑い声聞きつけ逃げ出した
さらわれかけたと訴えた
歯牙にもかけない父母と姉

助けがいるのはいまなのに
躊躇する場合じゃないけれど
差し延べられると怖くなる
なんだかきょうもまた胸がさわぎだす